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予習という「不完全な一周目」の重要性

投稿日:2020年5月9日 更新日:

一新ゼミでは常々「不完全な一周目」というものに焦点をあてて生徒を指導しています。

これは一新ゼミで日常的に学習指導をしてくださっているT井先生も同じです。T井先生も豊富な経験をもとに、特に難関大学志望生徒や医学部志望生徒の指導において「不完全な一周目」に着目しています。

「不完全な一周目」を重視する教え方とは、言い換えれば、「前倒し」と「周回重視」の教え方です。

一新ゼミは様々なレベルの生徒へ指導を続けてきました。その過程で、「一度習っただけでその全てを理解し記憶することを理想だ、しかし殆どの人にはそれが難しい」ということを強く実感し、これを前提に指導を続けています。

どうやら人間は、物事を理解する際に、それぞれの能力や個性や興味量に左右されながらも、この「不完全な一周目」を必要としていると感じています。厳密にデータ化しそれを蓄積したわけではありませんが、経験を通して納得を重ねてきた事柄です。

小学校での学習内容は生活に密着したものが多く含まれます。日常生活が小学校の学習内容にとっての「不完全な一周目」になっているように思われます。このため生徒たちは「小学校の頃は習ってすぐわかったなあ」などと呑気に感じてしまいます。

人間は比較で物事を評価します。多くの生徒にとってこの小学校の記憶が仇になります。中学、高校となるにつれ、本来の難しさ以上に「難しくて、よくわからないぞ」と感じてしまいます。一新ゼミではこのことについて、中学校や高校での学習内容が「初めましてコンニチハ」状態であり、習ったときが「一周目」になってしまっていることの寄与が大きいと仮定して、指導体制(講師間の認識)を共有しています。

さて、こんなことは実は常識です。この「初めまして知識さん、あなたの言ってることはよく分からない」と生徒が感じることを避けるため、中学校の学習内容は専門用語を減らした状態で小学校の教科書に載っています。高校の学習内容も複雑さを落とした状態で中学校の教科書に載っているのです。だから小学校で真っ当に勉強していれば中学校の知識の「初めまして」率は低く、もちろん中学校で真っ当に勉強していれば高校での「初めまして」率も低い。

しかしやはり、学校や教科書が用意する「初めましてコンニチハ」対策が十分に機能する生徒ばかりではありません。

私たちはこの「初めましてコンニチハ」から「難しく感じてしまう」という構造を、自分から進んで解決できる人間を育成することを目指しています。生徒たちに「まず習う前に自力で一周目をやろう」と指導しています。これは社会人として世の中を支える側になったときも役に立ちます。何をさせようとしても「ナラッテナイカラ、デキマセーン」などという社会人が居たら困ります。そんな生徒を世に出したくはありません。私自身いち消費者として、そんな人にお金を払って仕事を依頼したいとは思いません。

ゼミ生に対して、まずは数学を材料に「初めましてコンニチハ」対策として表題の「不完全な一周目」を実行させています。数学は積み上げ型で躓くと大変だと共通理解されている教科ですから、最初にやってもらっています。ゼミ生は速い人で1年以上先まで数学の予習が進みます。2年生のうちに3年生の全範囲が終わるなどということも一新ゼミでは自然な事です。

大学受験においても、高校1・2年の内容がもし「不完全な1周目」になっているのであれば、すぐにその「不完全な一周目」を加速し、早く終え、その後すぐに「二周目」を始めればいいだけだとなります。

現実は折々の定期テストや部活動の大会や模擬試験に翻弄され、一筋縄ではいきません。それでもこの「不完全な一周目」を意識的・積極的に行うことは、かなりの合理性があり、また、成績向上に有効です。

先日、高校生のYさんから「いまコロナで学校授業に頼れない。今までは学校授業がちょうどよい復習になっていたが、いまはそれがない。この場合、予習と復習のどちらに重きを置くべきか」という大切な質問を受けました。これをT田先生に回答していただいたので、その内容を共有したいと思います。

T田先生はその回答(下記)の中で「じっくりと1周目をやる勉強法も有効だ」と答えておられました。その後T田先生に詳しくお話を伺ったところ、『自分自身は高校1年2年ころ勉強不足だった。しかしそれが「不完全な1周目」といえるのではないだろうか』という意見もいただきました。自論に無理やり引き寄せるようではありますが、T田先生が仰っていた受験勉強での1周目は、実は『学校授業による「不完全な1周目」の後の、2周目』だったのではないかということです。

よって下記に紹介する文面にある「1周目」も「不完全な1周目の後の、2周目」を指していることがあります。この「受験勉強として行う2周目」や「能動的に行う2周目」を丁寧にやることで、できるだけ「3周目」を減らす。短期的には効率良く感じられないかもしれませんが、二度手間が減るため、長期的には効率のよいやり方である、こういう理解をすることができる内容かと思われます。

以下、T田先生の言葉です。(記事化にあたり表現等は読みやすくなるよう編集してあります)

高3開始時点で、問題集では1周もできていないものが多数ありました。30%~40%くらいの活用度だったと思います。ただ、模試や授業には全力で取り組んでいたので、不完全ながらも1周目といってよいほどの理解(70~80%程度の理解)はあったのかもしれません。

確かに高校の範囲は、簡単にイメージできる範囲ではありません。学習の1周目は、自分の中で疑問を見つけるという意味でも、時間がかかるのだと思います。だからこそ少しでも先に進めておくことが有効だったのかなと再認識しました。

次が、上記をふまえた上で読んでいただきたい、Yさんの質問へのT田先生の回答です。

数学の予習と復習の分量について、理解度のレベルと照らして考えてみました。

○授業と予習の進度に差が無い場合や、内容の理解に自信がない時

予習を極端に速いペースで進める必要はないと考えます。
進度に合わせて、分からないところや思考が行き詰まるところ、納得がいかないところを「見つける」つもりで、ますはざっくり予習します。
時間をかけすぎないのがポイントです。
その後、理解は授業で深めるといいと思います。必要なら学校や塾の先生を活用します。

この理解度で大切だと思うのは復習です。
授業→ワーク→チャート のように、徐々に難易度を上げながら、「分かった、解けた」経験を積み重ねるのが重要と思います。
模試や試験で経験があると思いますが、自分のモノにできたとは感じていない段階(解法は何となく知っているけど、類題や計算が合った経験の少ない段階)では、なかなか得点できないと思います。
解けるという自信やリズムの良さが、点数に表れてくるのが数学なのかなと感じていました。
なので、しっかりと知識や解法の地盤を固める、復習重視を勧めます。

○反対に、内容の理解に自信がある時

上述の場合と真逆です。ある程度、理解や演習の程度に満足したら、完璧ではなくとも次に進むべきです。
その先には難しくて時間がかかる単元があるかもしれません。そこに時間を費やすのが先決です。得意な単元 1 つを 80 点から 100 点にするより、不得手な単元を 40 点から 70 点にする方が、こと受験においては大切だと思います。
皮肉なことに、ある分野をどれだけ得意にしても、本番で出題されるとは限らないのが試験です。

質問の内容に対する回答はここまでです。
以下、オマケみたいなものです。

少し昔話をさせてください。
高校生の時の自分を振り返ると、2年生の終わりごろまで、本当に努力を怠っていたと思います。
1 分も勉強しない日が数多くあったし、全く手を付けなかった課題の問題集もありました。今でも本当に恥ずかしく情けない思い出です。
この演習不足は結局、受験の最後まで自分を苦しめました。当然のことだと思います。
それでも、なんとか大学の合格ラインに乗せることができたのは、1 問 1 問に他の人よりもこだわっていたからではないかと思っています。
自分は演習の絶対数こそ少なかったものの、1 問にじっくり時間をかけ、模範解答以上のものを吸収しようと心がけていました。
言葉にするのは難しいですが、解法・定理のロジックやその根拠について考えを深め、一般化できることや応用が利くことを探すということです。
平易な例を挙げるとすれば、関数やベクトルや方程式において、難解な計算をしなくとも、図形的あるいは体系的に分かることを見つける作業に似ています。
その作業は時として高校数学を逸脱することもありました。

ここでは、そういった学習の仕方の善悪や、個々の受験体験について論じたいわけではありません。ただ、勉強の方法は時期や状況に応じて、見直していく必要があります。
これが正解かどうか、皆に合うかは分かりませんが、今の考えを記します。

この 1 年弱、僕が見たところ、Yさんは受験までの見通しをしっかりと立てているだけでなく、課題に加えて自分に必要だと思うことを、多く実践できていると感じました。
僕ができなかったことでもあるし、とても立派で頑張っているなと頼もしく思います。

他方、特に数学において、もう少し粘ってもいいのではないかと感じることがあります。

すぐには解法が浮かばないような問題に出会ったときに、10 分ないし 15 分、自力(地力)で取り組めていますか。
本番を想定して、部分点だけでも得られるような答案づくりを普段からしていますか。
ギブアップしたとしても、解答で指針を確認するにとどめ、解き直しはできていますか。
解答の筆写になっていることはないですか。

こういった心がけが、模試・試験でのひらめきや応用力を培うのにつながります。
また時間をかけた方が、解法のノウハウや経験を、強く、長く自分の中にとどめておくことができます。
それが初見の問題に対しても臆せず取り組む自信に、ひいては得点になると信じています。
当然、1 問に時間をかければ、演習は進まなくなります。分からない事に向き合い、考えこむのは、体力を使います。見かけ上のスピードが落ちるので、当初の計画や他の人より、進捗や周回数で遅れをとるようで、焦りを感じることもあるでしょう。

でも、他の人が1 問を解く倍の時間をかけたとしても、3 倍の知見や経験を得られればどうですか。他の人が 3 か月で忘れてしまうところ、半年以上覚えていられればどうですか。
そう考えてみると、真のスピードダウンではないようにも思えるのです。

残念なことに、受験で競争相手となる、中高一貫校の生徒や浪人生に、単純な「時間の長さ」で勝つことは難しいです。
また、範囲のある定期考査では常にトップなのに、模試・入試では全く結果が出ない人がいるのも事実です。

だからこそ、「質」や「深さ」への意識を強くし、できることから日々の学習に取り入れてみてはどうかと思います。

もちろんこれは 1 つの意見・提言です。
周囲には先生や先輩、同期などたくさんの人がいると思います。
さまざまな考えに触れながら、自分のスタイルを動的(dynamic)に、最適化していってください。

努力が実を結ぶことを願っています。

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